2 バスケ部とモテ対決

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2 バスケ部とモテ対決

「こんなもの受け取ったんだが」 サッカー部主将の夏川透はカバンから封筒を取り出した。小野ロミオが手に取るとそこには赤い字で重要書類と書いてあった。 「『サッカー部主将 夏川透様』って。ラブレターじゃないの?もしかしてBL?開けてみよ!」 興奮しているロミオに急かされた美咲がカッターナイフを貸すと、夏川はそっと封を切った。 「……果し状?ってなんだこれは」 「俺。これに見覚えある。な、翼?」 「へ?なんだっけ」 今夜も兄の為に作った料理が残ってしまったので、練習帰りのサッカー部員が真田家に集合し箸を振るっていたのだった。 「忘れたのか?あの時、自分がふっかけたのに。全く」 呆れたように前田陽司は説明を始めた。 「翼がキャプテンの時、バスケ部も女子に人気が合ったから。翼はどっちが優れている部かって勝負をふっかけた事が合っただろう」 「……ぶっ?あれか!まさかまたやるの?」 これを想い出したロミオは思わずむせないように胸を叩いた。しかしまったく様子が分からない夏川は、中の書類を声を出して読み始めた。 「『サッカー部へ どちらの部が優れているか、左の内容で勝負しろ』とあるな」 勝負は、 スポーツ対決 ドッジボール対決 クイズ研究部によるクイズ 対決 彼女の対決人数 魅力度対決(インスタの「いいね❤」数) とあった。 「なんだよこれ?もう!翼のせいで俺達の代もやらないといけなくなったじゃないか」 ロミオは大きく肩を落とした。これを見た夏川は何でもない顔でシラと話した。 「……いや。部活動に関係ないし、くだらないから断ってくるぞ、俺は」 兄、翼も図太いが、現役キャプテンの夏川の心臓の強さに美咲は感心していた。しかし、ここで尚人がスマホを見て言い出した。 「そう簡単にはいかないですよ。バスケ部の人がその勝負をツイッターで拡散させていますよ、ほら」 尚人の持つスマホには封筒を受け取った夏川の鼻から下の顔の写メが合った。 「?いつの間に……」 「『サッカー部は受けて立つ』だって。透先輩はバスケ部の人に嵌められたですよ」 「なんだって?」 そんな驚く夏川の肩を、陽司はにっこり笑って叩いた。 「おう、透。これはお前が決めてくれ。俺達は忙しいし。な、ロミオ?」 「ああ。僕も透に任せるよ、ごちそうさま。じゃ」 そういって薄情な二人は帰ってしまった。そしていつの間にか兄貴もリビングから消えていた。 残った尚人は面倒くさそうに透に話した。 「透先輩。僕は前回の様子の情報を仕入れておきます。美咲は作戦を考えて。こういうの得意だろ」 「得意って?どういう意味だ。尚人?」 「アハハ?暇だからですよ?いやね?」 夏川の不思議そうな顔に内心ドキドキドキの美咲はそう誤魔化してスイカを食べさせていた。 そして続きの話しは明日に事にして、この夜は解散となった。 その翌日の昼休み。 美咲は花壇にやって来た夏川に作戦を言った。 「ドッジボールは前回のビデオがあったので私、観ました。それで良い考えが浮かびました。あと、クイズは2年の優作と晴彦コンビが良いと思います」 「真田はうちの部の優作と晴彦も知っているのか?」 「ええ。兄貴と仲が良いので。あと彼女の人数はどうですかね」 すると夏川ははあとため息をつき、花壇のピンクのバラを見つめた。 「実はな……。この話しを聞いた部員は今すぐ彼女をつくると言っているんだ」 「頼もしいですね。あと魅力度対決ですが、これも私に考えが、あれ、先輩?」 夏川はじっと美咲を見ていた。 「なあ、真田。……彼女ってどうしたらいいと思う?俺はキャプテンだから居ないと不味いかな」 真面目に悩む夏川に美咲はドキとしたが、ふうと息を吐いて応えた。 「先輩はモテると思うのですが、事情を話して今だけでも彼女になってもらうとか、そういうのはダメですか?」 「まあな。でも俺としてはそんないい加減な気持ちで彼女を作るのはどうも嫌なんだ……」 「え?」 ……なんて良い人なの。 普段どうしようもないサッカー部員を見ていた彼女は、汚れの無い彼の言葉に胸が震える思いがした。 「そ、それなら無理すること無いですよ。他のメンバーが何とかしますから、たぶん?」 この時、昼休みの終わりを告げるキーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。 「もう終わりか……なあ、今夜の翼先輩の予定は?」 「彼女の家に遊びに行くって朝は言っていましたけど。尚人も誘って来て下さいよ。作戦会議をしましょう!じゃ」 こうして学校を終えた美咲は、料理を作って夏川と尚人を待っていた。
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