第2章 攻防

31/86
前へ
/186ページ
次へ
 一瞬だった。  ハルベルの体が音もなく動き、少女の喉元をつかんだのだ。  少女が目を見開いたまま、動かなくなる。 「鈍いな」  耳元でささやく。少女の肩が、わずかに震えた。 「抵抗しないのか?」  少女の喉がゆっくりと上下する。 「殺して……くれるんだろう」 「あんたのお好みじゃねぇけどな」 「どのみち、同じだ」  ハルベルがくっくっと小刻みな笑いを漏らす。 「いい度胸だ」  指先に力を込める。  手の平に、熱い肉の感触が伝わる。熱く、湿っている。  少女が身をよじった。表情が苦しげに歪む。  細い体が、ぴくりと痙攣した。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加