第2章 攻防

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(——あぁ、そんな顔もできるのか)  唐突にそんなことを思った。 子供らしからぬ発言と表情、そして行動。何にも興味を持ってなさそうで執着もなさそうなこの少女にも、必死で守り通したいものがあるらしい。  かさかさの唇をなめ、息を吐き出す。目を閉じた。 眼裏に浮かぶのはあいつの姿だ。少女と重ねた、正体も分からないあの女。 (こいつは、違う)  あいつとは違う。  あいつは、決してこんな表情をしない。  息を吸い込む。息苦しい感覚が、ようやくほぐれた気がした。
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