第2章 攻防

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「なるほどな」  低くささやいた。少女の肩がわずかに上がる。 「使命ね。お前にも守るべきモノがあるってわけだ、泣ける話だな」  薄く笑う。腰の剣をそろりと抜いた。 「使命のために死ぬ……口で言うだけなら何とも美しい死に方だな」 「……ハルベル、お前、何を」 「ちょっとお前は黙ってな」  指先で刃をゆっくりとなぞる。少女は無言のままだ。 「いいかガキ、たとえお綺麗な名目でもな」  少女を見据える。少女の、目を。 「死は、苦痛を伴う。それが、分かってるか」  少女が視線をそらす。 「……殺せ」  ハルベルの目が、すっと細くなる。 「——それが、お前の答えか」  口元を歪め、笑う。カラン、と音がして剣が地に転がった。 「……残念だ」
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