第2章 攻防

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「苦しいか?」  少女の双眸が、ハルベルを見る。  虚ろな瞳。淀んだ沼を思わせる瞳だ。  薄い唇が、わずかに動く。  殺せ。  声はない。けれど、聞こえた。  低く、鮮明に。ささやくような声が耳の奥で響く。  ——殺せ。  少女の唇が、もう一度動く。
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