9/8 光まぶしい坂の道

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9/8 光まぶしい坂の道

引き続き、電車の話。晴れた日に乗る電車が好きだ。窓の外、まぶしく白に染め上げられた景色が見える。 とくに、坂道が白っぽくなっているのを見ると、強烈な既視感に目がくらみそうになる。なつかしい。なつかしい。わたしはこの光景を知っている。ずっとここに来たかったのだと、唐突に思う。実際はそういうわけでは決してないのだが。 なぜそう思うのかということには心当たりがあって、つまり簡単に言えば、幼いころよく遊びに行った祖父母の家に続く、あの坂道を思い出すからなのだった。あのころ、車の運転ができない母に連れられ、隣県に住む祖父母の家まで、電車で出かけた。実際にどうだったのかはよくわからないが、記憶のなかの景色は必ず晴れている。おそらく、帰省がだいたい夏休みだったからだろう。抜けるような青空、作り物みたいな真っ白い雲、そして世界中を満たすギラギラした日差しが、セットになって思い出を形づくる。 その日差しの向こう、坂のてっぺんに、祖父母の家はある。みずみずしい緑の山を背景にして、堂々と建つあの家。祖父母の家はだだっ広くて、いろんな部屋があり、着くなり我々子どもたちはそこらじゅうを走り回った。なぜか家の中に2つもトイレがあって、ものすごくびっくりした。それだけで、どこか異世界だった。ときには祖父と、ダイヤモンドゲームやオセロをして遊んだ。ひょうきんなことばかり言う、風変わりだが面白い祖父だった。 あの幸せな夏休み。あの日々があって、いまのわたしがある。それを一瞬で思い出させてくれる。こういうの、ノスタルジーって言うのだろうか。そんなわけで今日もわたしは、車窓を流れる風景に、目を細める。 終
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