病名

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病名

検査手術ははっきり言って既に記憶にはほとんど残っていません。 それくらい簡単なものですし、直ぐに終わったと思います。 母は気が気じゃ無かったと思いますが… この頃には痛み止めも効いていましたし、眠れないなんて事はありませんでした。 毎日車椅子面倒臭いとか何もすることなくて詰まらないとかばっかり考えてましたw 高校生ですからw そして検査手術の結果が出ました。 これは後から父に聞いた話ですが、父と母は先に結果を聞いていたみたいです。 竹先生が同時に説明すると仰ったのですが、父がそれだけはやめてくれと伝え自分の口から言うと伝えたそうです。 なので、初めに父から話がありました。 「ルクラン。」 「ん?」 「お前の検査手術の結果が出たそうだ。」 「そぉ。」 「先に言っておくが、かなり悪い。」 「…だよね。」 「覚悟してくれ。」 「分かった。」 父から病名は出なかったと思います。言えなかったのか、先生の口から聞いた方が良いと判断したのか…分かりませんし聞きませんが。 「ルクラン君。」 「はい。」 「君の検査手術の結果が出た。」 「はい。」 「骨肉腫(こつにくしゅ)だ。」 「………??」 「簡単に言うと骨にできるガンだ。」 「ガン……」 「この病気は15歳くらいから25歳くらいに多い病気でとても珍しい病気だ。」 「そぉなんですか。」 「100万人に1人と言われている。」 「宝くじですね。」 「嫌な宝くじだけどね。」 「……はい。」 「この病気は5年くらい前までは足を切り落とすしか治す術が無かった病気だが、現在は抗癌治療で切り落とす必要が無くなった病気だ。」 「抗癌剤とか使うってことですか?」 「その通りだ。」 「そぉですか。」 この時人生で目の前が暗くなるという経験を初めてしました。 本当に視野、視界の周りが暗くなり、全身がふわふわとして現実には思えませんでした。 母は…泣いていたと思います。覚えていませんが。 「この病気の治療は時間が掛かる。 この足の骨の黒い部分がガンだ。」 「はい。」 「このガンを手術で取り除く必要があるんだが、このままでは大きすぎるから抗癌剤で小さくしてから取り除く。」 「取り除く…」 「代わりに人工関節を入れる処置が普通だ。」 「人工関節… あの…どれくらい掛かるんですか?」 「通常は2年から3年掛かる。」 「3年……」 意味が分かりませんでした。 17にして3年。つまり20歳までは治療する必要があるわけですから。 あとの説明やなんかは覚えていません。 真っ白でした。 治療を受けると言いましたが、そぉするしか無かったので。 とは言え父が前もって色々と言ってくれていたので立ち直りは早かったと思います。 楽天的な部分の多い人間なのもあってなんとかなるかなー…くらいに思ってました。 高校生くらいの歳の子ってある意味最強ですからw 「治療に入る前に注意してもらいたい事があります。」 「なんでしょうか?」 「まず右足には今後負荷を掛けないでください。つまり、歩かないでください。」 「え?」 「今君の右足の骨は中から腐っている状態だ。 この病気は普通、骨が弱っていると知らずに運動して折れて気付くということが多い。 つまり今の君の右足は折れやすいんだ。折れてしまうと治療が遅れてしまってより時間が掛かってしまう。だから歩かないこと。」 「……はい…」 「……痛かったでしょ。」 「…はい。」 「骨というのは中に異常があっても痛くないんだ。 骨の表面にはラップの様なものが巻かれていて、それが痛覚を持っているんだ。 つまりそのラップさえ傷つかなければ痛くないんだよ。」 「へぇ。」 「でも、ガンが進行して、つまり骨が中から腐り、ラップの表面にまで到達すると、そのラップも腐っていく。 その痛みは想像を絶すると聞く。 大丈夫。君の人生の中でこれ以上の痛みは二度と経験しないよ。」 「……」 つまり人の感じる痛みの中で最上級の痛みだったらしい。 そりゃ痛み止めも効かないわな。 「これから先長いこと付き合っていくことになる。頑張ろう。」 「はい。」 こうして俺の闘病生活が始まった。
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