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美味しいの一言
「いててて…」ソファーに座ったままの姿勢で寝ていた俺は、少し体を伸ばして目をこする。
あっ!かぐや姫の事を思い出し、もしかして本当に夢だったのでは!?と思い一気に目が覚めた。
ベッドに彼女の姿は無い…
あんな非現実な話とか…やっぱり、俺の妄想だったのか!?と我を疑った…とりあえず、水でも飲もうと流しへ向かう。
あれ?
流しに山積みだった洗い物の食器は綺麗に洗われていた…テーブルの上や周りに散らかった缶ビールやカップ麺のゴミはまとめられていた…
やっぱり…
でも、彼女がいない…
とりあえず、狭いながらも部屋を探していると玄関の開く音がした。
「あっ、起きてたんですね♪お腹すいちゃったんですけど、冷蔵庫に何もなかったので買い物に出てました」まるで、彼女は前から一緒に住んでたように帰ってきた。
思わず出た…「おかえり」
この家で初めて俺が使う言葉に、彼女は少し目を潤めて「…ただいま」と答えてくれた。
変な間があいて、少し恥ずかしくなっていたら彼女は「お腹すいてます?」と手に持っていたビニール袋を上にあげた…日が出てる間は小さな体の彼女は重たそうに荷物を持って台所へ行く。
「何か手伝おうか??」と俺は言ったものの、正直…料理は苦手な方だ。
「じゃあ、どこに片付けたら良いか教えて下さい♪」と彼女はゴミを指さした。
「あっ、ごめん…」まとめてくれてたゴミをゴミ袋に片付けていると台所から良い匂いがしてきた。
何だろう…久しぶりに感じる…
「ご飯よ…起きて!?」
そんな声が頭のなかで聞こえた…誰の声だろう…そんな事を考えていたら、カグヤは片付けたテーブルの上に湯気の上がった食事を並べてくれた。
「旨そう!ってか…かぐや姫なのに、和食じゃないんだ…」思わず出た俺の言葉に、カグヤは少し不機嫌そうな顔をして答えた。
「別にかぐや姫だからって和食ってのは、偏見ですよ!確かに昔から生きてる年寄りだからって和食しか食べないとか、和食以外は好きじゃないとかでもありませんし、イメージとか気にしてられませんから…好きな物を好きに食べたって良いでしょ?!」まるで駄々をこねてる子供のような膨れっ面の彼女は、本当に可愛かった。
「そうだね、ゴメン!ゴメン!機嫌なおして??これ、食べても良い??」つい姿が幼くなってるからか、俺も年下相手のような対応になってしまう。
「美味しい!!」思わず出た俺の言葉に、彼女は機嫌を直してくれたようで、嬉しそうに笑った。
きっと誰かに美味しいと言われるのも何年ぶりなんだろう…そう思うと彼女の笑顔が急に切なく見えた。
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