掴まれたその手を…

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掴まれたその手を…

何故、彼女が泣いていたのか… それを知りたいのに聞けなかった… 聞いてはいけない気がしながらも 知りたいのに言葉に出来なかった… ただ笑って竿をふり、一緒にいる時間は楽しそうに見えた。 「あっ!日が上るね…帰らなきゃ!」そう言うと彼女は笑顔でお礼を言い立ち去った。 俺も、ゆっくりと歩き始める…送ろうか?とも、また会える?とも言えず…それでも、また会えるような気がしていた。 それから、また気になって海に寄るけど出会えなかった…釣具を持って出るのに、別にする訳でもなく…俺は、無意識に彼女と会えるのをただ待っていた。 気持ち悪いやつ…自分でもそう思いながらも、また会いたいと願っていた。 次の満月… 「湊さん?」その声に俺が振り返ると彼女がいた。 「カグヤさん??!」またも釣具を落とし、あたふたする俺に笑っていた…良かった…今日は泣いていない…ふと心に思った。 「また会いましたね」と言う俺に彼女は、 「また会えましたね」と答えてくれた…その言葉で心が温かくなるような気がした。 笑い合いながら、他愛もない事をはなしながら、あっという間に時間が過ぎて… 何故か最初に見た…涙の理由を聞きたくなった。 「あの時、泣いてたよね?どうして泣いてたの…?」 波の音 「良いよ!?気にしないで!答えたくなかったら、別に良いから」と焦る俺の手をカグヤは、掴んだ。 「戻りたい場所があったの…帰りたい場所が…でもね、もう無理なのかなって…月の階段と同じように…揺らいで、月にたどり着く前にユラユラ揺れる階段を踏み外して、また上がって、また踏み外してって…少し疲れててたの」優しく彼女は俺の手を掴んで、消えてしまいそうな声で答えてくれた。 握り返したい…握り返す勇気がなくて… 彼女の顔も見れず、黙って頷いた。
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