雨の日の約束

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雨の日の約束

どうして満月の夜じゃないと会えないのか?そんな疑問より、また会えるという事だけで俺は嬉しかった… どこの誰なのか、名前だって本名なのか、歳も…正確な事は何ひとつ分からない。 それなのに、何故だろう…また会いたかった。 帰りながら、次の満月っていつなんだ?と呟きながら携帯で調べる…何時に来れるのか聞いとけば良かったな…とか、あれやこれやと1人で呟いて、後から後悔する…今まで、こんな風に思ったりした事ない自分のダメさがよく分かる… それでも不思議と今度また会えるのが楽しみでワクワクしてる自分に気が付いた。 次は何を話そうか…携帯で調べた満月の日をチェックして、手帳に印をつける…彼女は何が好きなんだろうと考えながら、今度は何か飲み物でも持って行こうかな…そんな事を考えてる自分は、まるで幼い頃の遠足や修学旅行の前日のような気分で…何だか恥ずかしくなった。 その日が近付く…1週間前から天気予報が気になる。 まさかの雨続き…当日、雨だったらなんて考えてなかった…さすがに連日の雨、彼女は現れないだろうと思いながらも、特にやることもなく、テレビ番組にも執着心や興味がさほどないし、趣味だってこれといってない…気になってしかたない…もしかしたら、彼女は行ってるかもしれない…そんな予感がして、とりあえずでつけてるテレビを消し、傘をさして歩いて行ってみる事にした。 「バカだよな…何やってんだろ…あっそうだ、ビールなかったんだ」雨の音が響くなかで、ボソッと自分に言い訳するかのように俺は呟き…途中でコンビニに寄る。 ビールを手に取り、ふとチューハイのコーナーに月のデザインが描かれた缶を見つけ、足が止まる。 「…」無意識に迷わず手に取り、ビールと一緒にレジに持って行った。 コンビニを出ても、変わらぬ雨…一瞬、帰ろうかと思ったはずなのに…俺の足は海へと向かっていた。 「いるわけねぇか…てか、来るわけないよな…」やけに今日の俺は独り言が多い。
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