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雨の雫…涙の雫
しゃがみこんでいた彼女が俺の声で顔を上げる…傘をさす俺を見上げた彼女は、一生懸命に笑おうとしているのだが、彼女の目からは、たくさんの涙が溢れていた…
「湊さん…今日は雨でしたね…雨宿りしてたんですけど、濡れちゃって…」小さく呟く彼女の声は、雨の音で消されてしまいそうだった。確かに前髪も雨で濡れてはいたが、明らかに頬をつたういくつもの雫は…雨ではなかった。
「…」大丈夫ですか?と言いかけて、俺は言葉にするのをやめた。
大丈夫なんかじゃない…そんなの聞かなくったって分かる…そんな言葉をかけても、きっと彼女は今よりもっと必死に笑おうとするんじゃあと…それこそ見ていられない。
「さっき見つけて…ここには月が出てますよ?」さっき買った月の柄の入ったチューハイを手渡したら、突然彼女は笑いだした。
さっきまで、あんなに涙が溢れていたのに…
あぁ…やっぱり彼女の笑顔が好きだ…
そんな感情に自分で気付いた事と突然、笑われた事に驚いていると彼女は俺に同じ缶チューハイを差し出した。
「私も見つけて買っちゃいました(笑)」
「じゃあ、これカグヤさんにと思ったんで…どうぞ♪」と渡すと彼女も俺に同じ物を手渡す。
お互いに同じ物を見つけて、お互いに同じ物を渡そうとしていて、どっちを飲んだって同じ味なのに互いに交換して…今、一緒に乾杯している。
あんなに泣いていたのが嘘のように…
隣で一緒にしゃがんで傘に入れ、いつもより近い距離に緊張した。
いや…これが好きだって気付いてしまったから、余計に緊張した…
彼女は、いつもより一生懸命に笑おうとして話しているような気がして…胸が締め付けられる。
笑ってて欲しいと思うのに、何故か彼女に俺は…
「泣きたい日は素直に泣いても良いですよ」
そう呟いて彼女の肩に手をかけた。
そんな発言や行動に、自分でも驚いた。
俺は何やってるんだ…と思いながらも彼女は俺の肩で泣いていた。
彼女の頭を優しく撫でた。
ハンカチやタオルなんて気の効いた物も持ち合わせてない俺が出来る事は、肩をかすぐらいだった…
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