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涙の理由
こんなにも涙が溢れる訳を知りたい…
こんな俺じゃあ受け止めきれないかもしれなくとも…
「…ごめんなさい」そう言った彼女は泣き止み、雨も上がっていた。
「そういえば、乾杯してませんでしたね?」俺はさっきのチューハイを差し出した。
乾杯すると缶の音が響く。
傘をたたみ、静まりかえった海を眺めにいつもの場所へと歩き出す。
「カグヤさんに何があったのか…きっと俺なんかじゃあ、ちゃんとしたアドバイスとか出来ないだろうけど…俺の前では無理して笑わなくて良いから…泣いても良いから…いつでも聞く事は出来るから…」と情けないほどの俺のダラダラした頼りない言葉に、彼女は笑いながら頷いた。
吸い込まれそうな笑顔…やっぱり、これが好きって気持ちなんだ…彼女に笑ってて欲しい。そう思った時、雲の切れ間から満月が現れた…
そんなにお酒に強くないと話していた彼女は、チューハイを飲みきるとホッペが少し赤くなっているようだった。
やっぱり、可愛い…いやキレイだ…この満月のように光輝いている…もっと知りたい…気になる…聞きたい…もっと一緒にいたい…
「湊さん、ほろ酔いの話だと思って適当に聞いてくれますか…?こんな話したら、頭のおかしい人だと思われちゃうかもしれませんけど(笑)それでも構わないので…」彼女は、俺にそう言って、背負っていたリュックをあさり始めた…そして突然、かぐや姫の絵本を俺に渡した。
何度も何度も読んだであろうボロボロになった絵本を俺は受けとる…なぜ絵本?と不思議な顔をしていると彼女は、かぐや姫のあらすじを語り始めた…
「湊さん…かぐや姫の話は、だいたいこんな感じでご存知ですよね?この話、どう思います?本当に彼女は月へ帰りたかったと思います?もしも…帰らなかったら、どうしてると思います?」そんな不思議な質問に、俺は戸惑った…いったい彼女は何が言いたいのか…何が聞きたいのか…やっぱり、俺なんかじゃあ上手く答えられそうにない。
「…やっぱり、家に帰りたかったんじゃないのかな?故郷というか?それにお迎えが来た訳だし、帰ったんじゃないのかな?」とりあえず、俺は彼女の質問に答えた。
「この話…終わってないんです…」真剣な眼差しで彼女は俺を見た。
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