満月の夜に…

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満月の夜に…

本当なら、ほっとけば良かった… 夜道を歩く俺の前に彼女は、海にうつる月を眺めて泣いていた… 吸い込まれるほどに綺麗な満月の日 釣りを終えた俺は、帰るところだった… 普通なら関わらない方が良い…そう思うはずなのに、何故だろう俺は声をかけた。 正直、そのまま海に身を投げてしまうほどの切ない横顔が気になって…次の日のニュースで、あの時…声をかけてたら…なんて思いたくないのもあったからかもしれない。 次の日も休みだ…なんだか誰かと話したい気分だったからかもしれない。 それがキミとの運命の出会い… 「大丈夫ですか…?」釣り道具を背負う俺 「?!大丈夫?ですよ(笑)夜釣りですか?」涙をさりげなくぬぐい、振り返る彼女は綺麗な満月と同じくらいの輝いた笑顔で俺の方を見た。 「…いやぁ、久しぶりに友達に誘われて待ち合わせしてたのに、すっぽかされて(笑)あげくに釣れませんでした(笑)」 正直、彼女に引き込まれそうになって動揺しながらも言葉を返した。 波の音 潮の香り 「今日は満月が綺麗ですね…」そう言うと彼女は夜空を見上げた。 さっきまで明らかに、海にうつる満月を見ていたのに…まるで涙がこぼれないように空を見上げているようだった。 「そうですね…」そう言って、立ち去れば良かったのかもしれないのに…俺の足は何故か、そこから動かなかった。 湊透司(みなととうじ)彼女ナシ 1人でいるのが好きで、これと言って特技もなければ、趣味もない…釣りだって、友達に言われなければ何年もしてない。 物にも人にも興味がない…何かを極めた事もない…夢中になった事もない…成りたいとも思ってない…つまらない人間だけど、それで別に困ってもいない。 他人には、何かしたら?特技は?趣味は?何かあった方が良いよ?そんな風に言われて…とりあえずはやるけど、つまらない…その場は楽しそうに出来るけど…響かない。 所詮、そんな人間なのに…何故だろう 今日は自分から声をかけた… 別にタイプだったとか可愛かったからとかじゃない。 俺も、さっきまで1人で海にうつる満月を見ていたからかもしれない…
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