野焼きの匂いと飛行機雲

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「今日は良いお天気だから、お洗濯もよく乾きそうね」 午後1時。 生成りのブラウスをかけたハンガーを竿に干すと、風にふわふわとはためきました。 「あら、あれはタカかしら?」 裏の林の木の枝に、鋭い眼光でどこかを見つめている鳥がいます。 足元で私を見上げているタロウの頭を撫でながらタカを見上げてそう言った時、男性の大きな声と足音で、「ピックイー」と鳴くと、どこかへと飛び立ってしまいました。 「あれはサシバだよ。見た目通り、タカの仲間でね。ずっと遠い海外にも行く渡り鳥なんだって」 「あ、和泉さん。こんにちは」 「こんにちは。悪かったね、逃げちまった。声がいちいちうるさいって、死んだかみさんにもよく言われたんもだ」 がははと笑うと「今日も修理。いいかい?」と家を指差して言いました。 70歳とは思えない威勢と、ねじり鉢巻と作業着姿が良く似合うのは、元大工の和泉さん。 「はい、お願いします。行きましょうか」 そうして洗濯かごを持って、タロウと和泉さんと家へと戻りました。
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