秋雨と土の匂い

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秋雨と土の匂い

チクタクと時を刻む振り子時計は、不思議と心を落ち着かせてくれます。 秋雨によってしっとりとした風に乗って、湿った土の濃い匂いが部屋に流れてくるのを感じながら、温かいお茶を飲みました。 一息吐いたら再び手元に目線を落として、ひと針ひと針縫い進めます。 いくつもある種類やデザインの指ぬきから、その時の気分に合うものを指にはめて作業をします。 アンティークの物、鈴蘭など花が描かれたもの。 革や金属などのものや、指ぬきと言っても指輪型や、小さなお皿がついたもの、指先にかぶせるものなど、様々。 陶器で出来た物で、外国の街並みや、風景が描かれたコレクションとして集めている物もあります。 お裁縫箱は私にとっては宝箱のようなもの。 このお洋服にはどんな想い出があるのだろう。 どんな物語を、持ち主と歩んできたのだろう。 これからも傍に置いて貰えるよう、今日も依頼を受けたお洋服のお直しをしています。
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