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―2023年7月末・臨海市民病院― 僕の名前は火村陽輝。一応年は13で、本当なら中学校に通ってないといけないんだ。 だけど、僕は学校には一度たりとも行ったことはないんだ。 いいや、行けないんだ。僕には…この街で一番治る可能性の低い重い病にかかっちゃったから。それも…進行性のやつ。 けどね…この病気にかかったことでひとつだけ、幸せを見つけたんだ。 ―仮想世界ファンタジアース― 僕は医療用のVRマシンを無償で使わせてもらってるんだ。僕はこの世界で剣士として旅をしてるんだ。 「よう、陽輝!相変わらず眠たそうな顔して出てくるんだな!」 この女の子はミリア。僕がこの世界で一番最初に出会った魔族の女の子。特技は剣に変化することで、有事の時は本当に助けられてるんだ。 ただ…口調と言動がかなり男の子染みてるのも特徴なんだ。 「さぁ、今日はどんなクエストに行くの?なぁなぁ、早く決めて行こうぜ!ミリアは退屈なんだよ…」 「そうだなぁ……」 自分の体調自体は良好だけど…どんなクエストにしても何か今日は全て難関な気がする。 ―ギルドカウンター― 「う~ん………ひ、ひとまずお茶でも飲もうか。」 「お、おう…そうだな。焦らせるようなことしてごめんな、陽輝!」 僕はココアを、ミリアはコーラを注文し、席に座った。クエストに行く前は毎度こんな感じで〈クエスト会議〉なるものを行うんだ。 「今日は天候もいいし、季節的に日が落ちるのは遅いからたくさんやりたいところだけど…」 「考えてることはみんなおんなじ……だーっ、ちくしょー!何でもっと早くこれなかったの!」 「前にも言ったよね、今日は定期健診で少し遅くなるって!」 「あぅ………」 ミリアは陽輝にしかられ少ししゅんとなった。 「と、とにかく今日はどんなクエストを受けようか?」 「そうだなぁ…ここのところ、討伐系クエストの希少価値が高いからねぇ…。フフン、遅刻してきたぶん、働こうか。」 …とっても理不尽ながら、僕はクエストを受注した。
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