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―その頃、王城・陽輝の部屋―
(ナナリィ姫が拐われただと!?…陽輝さん、どういうつもりですか!?)
…どうして、僕はこんなに弱いんだよ。僕はやっぱりレベルが高くて少し有名なだけの剣士なのかな…?
所詮病人上がりの男の子だったのかな……
コンコン
「はい……どうしたんですか?」
「私と少し話しませんか、陽輝さん。」
部屋に入ってきたのはナナリィの母さんでこの国の王妃エルネスさんだった。
「先ほどは夫が辛辣な発言をしてしまったこと、妻が代わってお詫びします。ですから、私はあなたを責めたりはしません。むしろ、あなたに感謝したいのです。」
「僕なんかのどこに感謝を…?」
「あなたは二度もうちの娘を守ってもらいました。守りきれなくても守ろうとしてくれたその心の優しさはあなたが誇るべきことだと思います。」
「いえ……僕は、そんな」
「誰かを守るということはとても勇気がいります。それを何の躊躇もなく自然にできたあなたはあの子の英雄になる資格があるのではないですか?」
エルネスは真剣な目付きで、でも優しく陽輝にこう言った。そして、そのまま『結論は自分で出してください』と言い残し、部屋を出ていった。
「そうだよね…僕はあの子を守りたかったから守ったんだ。例え守りきれなくても、守ろうとした事実は変わらないんだ。なら…!」
僕は、あの子を照らす太陽になろう!どんな悪も照らし出す太陽に!
陽輝は決意新たにギールの店に向かった。
―刀匠ギールの店―
「ほらよ、お前さんの剣はしっかり直しといたぜ!何なら、素材から見直して鍛え直したんだ!これでさくっと姫を連れ戻してこい!もう片方もじきに終わる…さぁ行け!」
「……はい!ありがとうございます、ギールさん!」
見ててくれ、ミリア…君が大好きだっていう剣士が、姫を救う剣士になるところを!
陽輝は新しい剣を腰に携えると、ラズリートが待つ〈虹の祭壇〉へと走っていった。
その瞳からは弱さや後悔がすっかり消えていた。
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