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キサラギ・サラの最後の目覚め
目を覚ました時、私は自分がどこにいるのか、咄嗟には判らなかった。
弱い睡眠薬を常備しているのだけど、それを使った後の目覚めはよくこうなる。
そして大抵は、いつもの、自分の部屋にいる。
薬を使わなければ眠りに落ちることさえ出来ない自分を、恥じる感情がどこかにある。
周囲には明るい振りをしているけど、自分のようにか細い神経で、高校を卒業した後、広い社会で生活が出来るのだろうか。
今だって、私はあの人にずいぶん依存してしまっている。
あの人に嫌われてしまったら、この世に私の味方などいなくなってしまうのじゃないかと以前から思っていた。
そうなったら、自分なんかが生きている意味など無いんじゃないだろうかと。
聴覚や嗅覚を少しづつ呼び覚まし、私はまどろみから抜け出ようとする。
その時、聴覚が、不自然な音を拾った。
空が震えるような音。
地面を打つ水滴の喚き。
雷雨の音だ。
顔から血の気が引くのを感じる。
いけない。
窓際には、大切なものが置いてある。
窓をちゃんと閉めていたっけ。
あれが、雨に打たれていなければいいけれど。
私は窓へ歩み寄よろうとして、眠気を追いやり、全身の感覚を正常に戻していく。
そうしたら、そこには、絶望が待っていた。
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