帰国

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帰国

 俺は、一日も早く桃香に会いたくて、がむしゃらに勉強した。 そんな中でも、俺は毎日『丸山桃香』をあらゆるSNSで検索する。 しかし、ありがちな彼女の名前で引っかかってくるのは、同姓同名の別人ばかり。  俺は、二年で取得予定だったMBAを一年で取得した。 一年早く帰国して父の会社に入社する。 まずは現場を知るため、工場での製造管理に配属された。 覚えることは山のようにあり、休日も有ってないようなものだった。  それでも、あいも変わらず、隙間時間を見つけては桃香の名前を検索する。 今日もやっぱり、桃香は見つからない。 いつも通り、女子高生やネイリスト、ピアノ講師のアカウントが並ぶ。 今日、新たに見つけたのは、元気よく這い這いする赤ちゃん。 かわいいけど、違うな… 俺は“いいね”だけ付けてその画面を閉じた。  その年の秋、製品の納品に俺も同行する。 納品先は、俺がバイトしてたファミレスのセントラルキッチン。 偶然にもそこは桃香の出身県にあった。  俺は担当者と共に、納品し、セッティングし、動作確認をする。 その後、使い方を説明するために、そこの従業員に集まってもらった。 機械の周りを、白衣やマスクを着け、性別すら分からない状態の従業員が取り囲む。 材料を投入し、稼働させると、 「おおー!!」 と低い声で歓声が上がる。 説明を終えた直後、俺は見覚えのある後ろ姿を見つけた。 「桃… 香?」 俺は、仕事も立場も忘れて駆け出した。 「桃香! 桃香だろ?」 俺は全身白衣の彼女の手首を掴んだ。 「違います」 彼女は、顔を背けたまま答えるが、声は絶対に桃香だ。
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