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彼女はムッとした顔に変わり、あなたの腕にポカポカと殴りかかろうとしたのですが、車が動き出したことでグッと堪えたようでした。
代わりに大きくため息をつき、背もたれに沈みます。
「怒らないって言ったろ」
「怒ってない。……でも、それって都合が良いってことじゃん。都合が良い女なんだ、私」
あなたは彼女のその言い方はさすがに面倒だったようで、否定せずに運転を続けました。
二年も一緒にいるのですから、あなたが中途半端な気持ちでいるとは、彼女だって思ってはいないでしょう。
しかし、今日は彼女の父親に結婚の許しを得た記念すべき日なのです。彼女にとって、今日のあなたの言葉はいつもより特別なものになります。
あなただってそれは分かっているはずです。
彼女は何も言わなくなったあなたに顔を歪めて、「怒ったの? ごめんね?」と早くも折れ始めます。可哀想です。今日くらい、彼女に応えてあげてください。
あなたはマンションの前の通りに車をつけました。駐車場には入らず、人気のない通りでエンジンを切ります。
なぜマンションに入らないのか彼女は不思議そうに首を傾げ、あなたを見ましたが、あなたはこちらを向いた彼女の顔を捕らえ、引き寄せたのです。
「んっ……」
あなたは強引に彼女の唇を奪いました。
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