10人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなやりとりをしたのが、目覚めてすぐの話だ。
その言葉通りあわやぽっくり逝きかけた兄に対する妹の発言だとは、よもや思うまい。だが世の中所詮は結果論だ。馬鹿やって勝手に死にかけたのは自分自身だし。自業自得か、とその時ばかりは素直に受け止めて、前のめりになった身体をベッドに預けた。
「…おつかい…」
どこか釈然としない気分のまま、窓の外を眺める。
真っ青な空に悠々自適な雲がのんびり散歩をしていて、あまりの平和の極まりなさに今自分が置かれている状況とのギャップを凄まじく感じる。
─────────暇だ。
みんな今頃何やってんだろう。いや学校行ってんだろうけど。
とは言っても、ヒデもよっちゃんも一歩間違えれば今俺が置かれている状況に十分なり得たというのに、一回の訪問っきり音沙汰なしとは、薄情な奴らだ。学校に行けば寝ても覚めても一緒にいてバカやったのに、俺たちの友情ってそんなもんだったわけ。
そんな思いがふつふつと沸き起こり、知らず識らずのうちに苦虫を噛み潰したような顔になる。自分は割と無関心な方だと思ってたけど、いざ「こう」なってみると人並みに寂しいとかそういう感情、持ち合わせていたらしい。
「誰か連絡してこいよー」
ベッド脇の小棚に置いていたスマホに手を伸ばし、あてもなく番号をタップする。
プップップ、の音に続いてプツリと音が鳴った時、
「はぁい没収」
後ろからスマホをかすめ取られた。
「あ。レオナちゃん」
「“ちゃん”じゃないしー。歳上」
ぱし、と頭を叩かれていてっと軽く声を上げる。
担当のレオナちゃんこと新田麗央那は、齢27の美人看護師だ。都内でも廃れた病院であるのをいいことに、髪は金に近い明るめの茶髪だし、カラコンをし、メイクもバッチリ決め、出会って数回目にした中でマスクをしてるところなんて見たことがない。
けど仕事は出来るから周りも何も言えないんだそうだ。間延びした喋り方だろうが気怠げな所作だろうが、やることやってんならチャラだろう。強面のおばちゃん看護師よりはこっちとしても俺得だし、と破顔する。
最初のコメントを投稿しよう!