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一次会
新幹線の車窓に映る、少し疲れた自分の顔を眺めていた。
(同窓会か……)
今年のお盆は帰省しないつもりだった。もうすぐ三十路を迎えるという歳になって、未だに独り身の私こと喜多村要は、今までそこそこの恋愛をしてきたものの、二年程前から仕事一筋の生活を続けている。つまり、結婚の『け』の字も報告することが無い以上、最近では益々実家へ足が遠のいていたのだ。
しかしそれは、数日前にかかってきた一本の電話で事態が急転する。
風呂上がりに一息つこうとしていたその夜、1LDKの室内に着信音が鳴り響いた。液晶画面には、懐かしい中学時代の親友の名前が。
「もしもし? 明日香? 超久しぶり。」
「要~。三年前に飲んだぶりくらい? フフッ……元気してた?」
「急にどうしたの?」
「実は今度のお盆に、地元で三十路記念の同窓会やるんだって。要は行く?」
晴天の霹靂だった。今まで同窓会なんて一度もやってこなかったのに、今頃になって中学三年のクラスで同窓会をやるだなんて。もちろんただの同窓会というだけなら、帰省し辛い状況の私は断ったかもしれないけれど……
「幹事から聞いたんだけど、どうやら梅原君も来るみたいよ」
(えっ……)
自分でもゲンキンだなと思いつつ、そんな単純な理由で出席を決めてしまった。まさか、アイツまで参加するとも知らずに――
* * * * *
同窓会の会場となったのは、地元駅前近くのオシャレで小さな和風創作料理屋だった。勿論当日は一晩、私達の同窓会で貸し切りだ。
お店の扉を恐る恐る開けると、座敷の広がるフラットなフロアに、同窓生の面々が出迎えた。どこもかしこも懐かしい顔ぶれしかない。全体としては二十人程が参加していて、クラスが三十人超の人数だったので、三分の二程が参加しているようだった。
同窓生達は次々に私の苗字や名前を呼んで、「久しぶり!!」や「元気だった?」と声をかけた。15年の月日が経っていても、大体皆どことなくあの頃の面影が残っていて、すぐに月日があの頃へ遡る。そんな中、同窓会の連絡をしてくれた親友の明日香が、座敷の奥から私を見つけて手招きした。
「要久しぶり~! もしかして今帰って来たばっか?」
「ううん。一度実家に戻ってから来たよ」
私に飲み物のメニューを見せつつ、彼女は隣の席へ座るよう促した。
「ありがとう。……ところで、梅原君は?」
早速小声で訊くと、
「あそこに居るよ。彼、三十路なのに相変わらず恰好いいね。お酒入ってから女子が群がる群がる……」
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