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「何それ? 何の話?」
「俺達、あの後卒業まで付き合ったんだ。俺が喜多村を脅して、だけど。付き合ったって言っても数回デートしたくらいで、別に何も無かったけどな」
島崎はそう言って、次のカクテルをバーテンに頼んだ。私達三人は暫く黙り込み、その場に沈黙の時間が流れる。梅原君は何かを考え込むように、両手を組んで前方を見つめていた。そのうち急にウィスキーをぐびっと飲み干すと、バーテンにお替わりを頼んで、島崎に向き直る。
「それで? お前は何しにここへ来たの?」
(え? 謝るためじゃないの?)
「察しがいいな。さすが親友」
「悪友の間違いだろ?」
「まぁ、そうだろうな。俺を同窓会に呼ばなかったくらいだもんな?」
(え?)
「俺が仕事で来れないだって? バカ言うなよ。うちの会社はちゃんとお盆休みだっつーの」
「誰から同窓会のこと聞いたんだ?」
「今日行けなくなった奴から一昨日くらいに聞いた。お前も俺に謝罪しろよな!」
梅原君は「悪い悪い」と軽い口調で謝りながら笑っていた。何だか二次会までのイメージが嘘みたいに、島崎とやりとりしている梅原君の印象がまるで違って見える。それだけ二人は仲が良いのか、それとも……。
(これが本当の梅原君なのかな? 悪友とか言いながら、島崎とは結構仲良さそうだけど……でもさすがに島崎を同窓会へ呼ばなかったのはどうなんだろう? この二人って本当はどういう関係なの?)
「それで島崎は俺の邪魔しに来たんだ?」
「え?」
「わかってたんだ? 俺が喜多村さん口説こうとしてたの」
「ええっ!?」
「まぁな。親友だからな」
「悪友な?」
二人は私を挟んで、目から火花を散らしている。今回の同窓会は、甘酸っぱい片想いを思い出す程度だと思ってたのに……。
(もしかして今私、人生最後のモテ期来ちゃってる?)
二人を交互に見ながらも、頭の中では整理が付かずパニクっていた。二人に想われて嬉しくないわけではないけれど、さすがにこの状況はどうしていいかわからない。しかし、そんな私へ追い打ちをかけるように……
「で?」
と島崎が言うと、ニ人は同時に私の顔を覗き込んだ。
「「どっちにするんだ?」」
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