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俺もこの忙しい時期に、仕事は仕事でこなしたものの、その他の時間は彼女のことばかり考えていた気がする。 連絡先を交換してから初めてメールを送る時は、なんでもない文章を送るのに文字を打ち込んでは消し、消しては打ち込み、送信ボタンを押すまでに30分もかかってしまうほどテンパった俺。 それでも彼女とは、時々連絡を取り合い、週末には一緒に食事へ行く約束もした。 「なあ、沢田。」 「なんだよ。」 「女の子って、食事するならやっぱ洒落た所がいいのか?」 「そりゃあそうだよ。俺はクリスマスに夜景の見えるレストランを予約するぜ?あ、そう言えばなぁ、湘南に雰囲気がめちゃくちゃ良い店があんだよ。『クッチーナ』っての、ここオススメ・・・って、おい!」 「あ?」 「氷室が女の子の話をするなんて、どうした!俺の話を聞いて、彼女が欲しくなったのか?」 「いや別に。ちょっと訊いてみただけだって。」 「だよなぁ?氷室だもんな~!」 沢田は嘲笑うように俺を見て、ジョッキのビールを飲み干した。
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