65

1/3

4425人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ

65

「氷室さん・・・・いつから?」 「ん?」 「いつから私との結婚を考えてくれたんですか?」 「・・・・・・・・そうだなぁ。」 首を傾げて俺の顔をじっと見る彼女。 髪をゆっくり撫でながら、その質問の答えを少し考える。 「付き合いだして、わりとすぐに。漠然と。」 「・・・・・そんな前から?」 「ん。」 「・・・・・。」 「元旦に晴れて初日の出が見られたら、プロポーズをしようと決めていた。」 「・・・・・そうだったんですか。」 「クリスマスあたりから、俺、マジで緊張しっぱなしだったよ。」 「・・・・気がつきませんでした。」 「ハハッ、それは良かった。でも・・・・。」 「・・・・・?」 「・・・どうしても、おまえが俺のものだって証が欲しかったんだ。」 目を細めて微笑む彼女の頬には、俺の気持ちを掴んで離さない、可愛いエクボがあった。 「氷室さん・・・・・ありがとう。」 「・・・・・ん。」 彼女が呟いた「ありがとう」の意味はきっと深い。 一年の始まりのこの日、彼女の未来を、そして俺の未来を、大きく変える選択をした。 そこに迷いはなかった。 何よりも、それが嬉しかった。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4425人が本棚に入れています
本棚に追加