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残業を終えて帰ると、時刻は10時を過ぎていた。 伝票を処理している時は仕事に集中していたが、帰りの電車に乗ってから頭に浮かぶのはユリのことばかりだった。 せっかくメールをくれたのに・・・ はぁ、会いたかったな・・・ 電車を降りて改札への階段を上がる。 2月の空気は冷たくて、白い息を吐きながらコートのポケットへ手を突っ込んだ。 ふと、ユリの顔が頭に浮かぶ。 今頃、ユリは何をしてんのかな・・・ 遅いけど、帰ったらメールくらい・・・ 改札を出て、何気なく前を見た。 そこに 彼女が立っていた。 彼女はじっと動かずに俺のことを見ていた。 縮こまって両手を胸の前で合わせ、風に揺れる長い髪の隙間から赤くなった耳が覗いている。 こんな寒空の下、いつ帰るかわからない俺のことを待っていたのか? いったい、何時間・・・ 「ごめんなさい・・・どうしても会いたくて。」 その瞬間 賑やかだった街の、音という音がすべて消えた。
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