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「おいで。」
俺は彼女の手首を力いっぱい握ると、自宅への道を歩きだした。
引っ張られるだけのユリは驚いたとは思うが、何も言わずについてきてくれた。
いつも小さなユリと歩く時は、なるべく彼女のペースに合わせていた俺だったが、今はそんな余裕がない。とにかく掴んだ手を離さずに、どんどん歩いた。
途中、すれ違う人や通りかかった店の主に、変な目で見られたのはわかっていた。でも、もうそんなことはどうでも良かった。
早く、ユリを連れ去りたかった。
早く、ユリと二人きりになりたかった。
早く、ユリを抱きしめたかった。
何故彼女が、俺とそれほどまでに会いたかったのかは知らない。
真冬にもかかわらず何時間も自分のことを待ち続けてくれた彼女が、ただ愛しかった。
アパートの鍵を開け、ドアを引くと同時にユリを中に押し込める。
後ろ手にロックをかけて、彼女と向き合う。
「・・・・・ユリ。」
無我夢中で、抱きしめる。
彼女の頬に手を当て乱暴に上を向かせると、冷たく凍った唇にキスをした。
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