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「んっ・・・ぁ・・・。」
止まらなかった。
呼吸も苦しくなるほど、強く強く求めた唇。
俺から離れていかないように、溢れ出している気持ちを受け止めてもらえるように、彼女をこの腕の中に閉じ込める。
ユリを前にすると面白いくらい簡単に、理性の壁が壊れてしまう。
ユリ・・・会いたかった・・・
本当に、会いたかったんだ・・・
「こんなに冷えるまで・・・待たせちゃったな。」
寒風に晒された紅い頬を、手で覆って温める。
「いえ、私が勝手に待っていて・・・。残業だと言われていたのに、どうしても会いたくて・・・。」
「・・・・・改札を出たらユリがいて、俺ヤバかった。・・・ちょうどユリのことを考えていたら、いたから・・・。」
「氷室さん・・・。」
「・・・ユリ・・・・温かいコーヒーを淹れるから、入りなさい。」
「あ、でも、残業があって疲れたでしょうから、私帰ります。」
「・・・・・・・ダメ。」
じっと彼女の目を見つめる。
彼女もそれに応えるように、見つめ返す。
靴さえ脱いでいない玄関で、ドア1枚隔てた廊下を人が通って行くその場所で、もう一度俺は彼女にキスをした。
「・・・・・・・まだ帰さないよ。」
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