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ヒーターをつけた部屋で、俺はコーヒーの入ったカップを彼女に渡す。 そのカップを両手で覆うように持ったユリは、「あったかい」とエクボを見せた。 「ユリ?・・・・これ。」 本棚の籠から、昨日届いたばかりのキーホルダーをとり、小さな手のひらへ乗せる。 「これ・・・・。」 「そう。あの日カップを買った雑貨屋に、1つだけ置いてあったんだ。・・・二人で同じものを持ちたくて、もう1つ頼んどいたら、昨日入荷したって連絡があった。」 「・・・それで昨日、誘ってくれたんですか?」 「ん、そうゆうこと。早く見せたくてね。」 彼女はそれを受けとると、じっくり手のひらの上に乗せて見て、「かわいい」と呟いた。 「氷室さん、ありがとうございます。大切にします・・・・・。」 目を閉じて、キーホルダーを胸に抱き締めた。 「そのキーホルダーに、これつけて?」 自分の部屋の鍵を差し出すと彼女は驚いていだが、やがて「うれしい」と呟いて睫毛を濡らした。 ソファに座って、震えるその肩を抱き寄せ、俺は髪に口づける。 「こら、また泣く。」 「だって・・・氷室さんが優しいから・・・。」 見上げる瞳に、少し困ったように俺は笑った。 「そりゃ、俺はユリに惚れてるからな。」
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