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3月に入ると、ユリは忙しそうだった。
4月の入社式に向けて、新入社員の事前研修が行われるため、その準備に追われているらしい。
毎日、通勤電車の先頭車両で彼女と会ってはいたが、少し疲れているようで痛々しかった。
「ユリ、昨日も残業してた?」
「はい、本当に手際が悪くって・・・でも、氷室さんほど遅くはなりませんよ。」
「また寝不足からの偏頭痛か・・・。」
「えっ・・・顔に出ちゃってますか?」
「そんなことねぇけど、俺にはわかんの。」
「ふふっ・・・・・そうなんだ。」
「まぁね。」
ユリと俺の付き合いは、そんな中でも順調だった。
毎日こうして一緒に出社し、家に帰ったタイミングで短いメールをやり取りして、お互いの日常を感じあっていた。
ユリが休みを取っていても、忙しく働いた体を休ませてあげたいと連絡さえしなかったが、彼女も俺のそんな気持ちを察しているようだった。
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