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ある日のこと。
仕事が終わり外商別館を出ようとすると、沢田に話しかけられた。
「氷室、終わったんならお前も付き合えよ。駅の向こう口に出来た居酒屋へ行くんだ。」
何となく同じタイミングで帰ろうとその場にいた社員が、ぞろぞろと駅に向かって歩いていた。
居酒屋に行って酒を飲む気分ではなかったが、腹も減ってきたので、俺は付き合うことにした。
「あーっ、ユリちゃんじゃないか?ユリちゃーん!」
突然大声をだした小野寺の視線の先を見ると、ユリが駅のコンコースを一人で歩いている。
振り返り笑顔を見せて「皆さん、お疲れ様です」と挨拶をする彼女。
すると、小野寺が遠藤を無理矢理引き連れて、ユリの元へ寄って行った。
「ねっ、ユリちゃん。時間ある?ちょっと飲みに行こうよ。遠藤も一緒に・・・・なっ。」
あいつ・・・
まだそんなこと考えてんのか・・・
諦めろ、ばーか・・・
耳に入った小野寺の会話に、思わずムッとする。
チラッと3人を見ると、ほんの一瞬だけユリと目があった気がした。そして彼女は、小野寺と遠藤に向き合い、驚くことを口にした。
「小野寺さん、すみません。お気持ちは嬉しいんですが・・・・・・・私、ずっと好きな人がいるので、こういうのは困ります。」
ドキッとした。
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