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・・今・・・ユリはなんて言った?・・・
「好きな人がいる」って・・・
俺のこと?・・・だよな・・・
いつも控え目な彼女が、はっきりとした口調で言った言葉に耳を疑った。
「生意気言ってごめんなさい。でも彼以外の人は考えられないので・・・・・。」
「そ、そうなんだ・・・なんだ、ユリちゃんは仕事をバリバリやってるから、そういう時間なんかないんだと思ってた。・・・いや、ごめん!」
「ふふ。小野寺さん、私も普通の女の子ですよ?」
「そっかぁ・・・そうだよなー。でも遠藤とお似合いだと思ったんだけどなー。・・・・もしかして、その好きだって人と、付き合ってるの?」
「・・・はい・・・今も、彼に会いに行こうと思ってたところです。」
「わかった・・・ほんと、ごめんなー。」
彼女はニッコリと笑うと、挨拶をして改札口をぬけ、雑踏の中に消えて行った。
まずい・・・ ユリにもってかれた・・・
どんな顔してんだ?俺・・・
俺は緩む頬を必死に誤魔化しながら、沢田たちに「やっぱ明日の朝早いから」と断って改札へと向かった。
上りホームの柱の陰に行くと、彼女が微笑みながら立っていた。
「やっぱり、来てくれましたね・・・・・あのまま皆さんと飲みに行ったかと思っちゃいました。」
なんだ?・・・
この可愛いいきものは・・・
俺は黙って彼女の右手をとり
自分のコートのポケットへ、入れた。
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