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「おーい、氷室。」
外回りの業務を終え、デスクに戻った俺に話し掛けてきたのは、沢田だった。
「来週の金曜日、空けとけや。」
「来週?」
「同期の小原が、こっちへ来るらしくてさ。一緒に飲もうって言ってんだ。来るだろ?」
「小原・・・・・」
「新宿店のだよ。お前、知ってるよな?」
「あぁ・・・・・わかった。」
小原からまた最近、電話が掛かってくるようになっていた。
一度「忙しいから、しょっちゅう電話されても困る」と言ったのが春のこと。
暫くは連絡がなく正直ホッとしていたが、1週間ほと前に「久しぶりに会いたい」と電話があった。
来週の金曜日か・・・
たぶん、はっきりと言った方が小原のためにも良いよな・・・大事に思っている女性がいるから、と・・・
偶然にもその金曜日のこと。
他店へ応援勤務しているユリから連絡があった。
『今日は久しぶりに早く帰れそうです。
氷室さんのお家に行ってもいいですか?
会いたいです。』
俺は迷うことなく、すぐさま「待ってるよ」と返事をし、先約の沢田へ断りの連絡をいれる。
沢田は「小原も仕事の都合で来れなくなったのに」とぶつぶつ言っていた。
そのうち小原から連絡があったら、ユリとのことをちゃんと話そう、と密かに思った。
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