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「こんなに疲れて可哀想に・・・お休み、ユリ。」
ソファにもたれ掛かり、すやすや寝息をたてる彼女の髪を、俺は何度も何度も撫でた。
ユリがこの部屋に来るのは、本当に久しぶりだ。
他人から見たら、「それで恋人同士なのか」と言われるだろう。
その久しぶりの時間に会話することもなく、俺の側で寝息をたてる彼女に、こうしている間にも愛しさが増していく。
無防備な寝顔に喜びさえ感じているのだから、困ったものだ。
俺はユリの隣で、ずっとその寝顔を見ていた。
RRRRRRRRR・・・・・
テーブルの上に置いた携帯が、突然静かな部屋に鳴り響く。
手に取ると、画面には「新宿小原」の文字。
少し考えたが、ユリを起こしたくない気持ちから、早く鳴り止ませたくて通話ボタンを押した。
「もしもし。」
『氷室くん?・・・今日は、そっちに行けなくてごめんね。』
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