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屋外からかけているらしく、電話の向こうからガヤガヤと雑音が聞こえている。
だからなのか声を張って話す小原のことが気になり、俺は立ち上がって話しながら寝室のドアを開けた。
「あぁ、別にいいよ。俺も急に用事ができて、行かなかったんだ。」
『そうなの?!』
ベッドの端に腰かけ、ここなら電話をしていてもユリを起こすことはないだろうと、少しホッとする。
「沢田や小野寺たちは、行ったと思うぜ?」
『なんだ、氷室くんもだったんだ。』
「ああ。」
『ねぇ・・・だったら、今度・・・』
バタン・・・
玄関のほうで、物音がする。
ドアを閉める音だ。
嫌な予感がして、寝室を出る。
部屋を見回すと、さっきまでそこで寝息をたてていたユリの姿がどこにもない。
慌てて玄関へ向かうと、彼女が履いていたスリッパが無造作に脱ぎ捨ててあり、靴がなくなっていた。
「えっ・・・・・。」
事態が飲み込めず、茫然と立ちつくす。
『もしもし?氷室くん?』
携帯からは小原の声。
「小原悪い、電話切るっ!」
戸惑っている様子の小原にそれだけ言ってボタンを押し、ユリの携帯へ電話をかけた。
電話からはただ呼び出し音が流れるだけで、応答がない。
うそだろ?・・・
どうしたんだ、ユリ・・・
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