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「オレとは残念ながら全くちがう路線だったよ。でも氷室とほとんど同じ街みたいだな。使う駅は1つ違うらしいけどさ。」 得意気にそういうと、湯川はジョッキのビールを旨そうに飲み干した。 今まで通勤途中に彼女を見かけたことはなかった。 かなりの乗降客がある路線で、乗車する車両が違えば無理もないことだが、そんな共通点があるとは思わず、知らないうちにすれ違っていたのか。 一度遠い存在となった、あのエクボのできる彼女が、再び近づいてきたように思えた。 「氷室、お前電車で会ったことあんの?」 「・・・・・いや多分、ない。」 「ま、氷室は女に興味ないもんな。こんな情報は、関係ないか。」 「あ?・・・ああ・・・。」 自分の小さな動揺を悟られまいと、咄嗟に嘘をついた。 ほとんど忘れていた感覚が、甦る。 ヤバいな、俺・・・ すげぇ喜んでる・・・
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