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大粒の涙をポロポロ流し、嗚咽する彼女。 徐々に冷静を取り戻し、俺は大きく溜め息を吐く。 よかった・・・ 無事だった・・・ 無事で・・・戻ってきてくれた・・・ 小さな手を握ってソファへ誘い座らせ、その正面に膝まづき、そっと抱きしめる。 すると一瞬、俺を拒絶するように体を引かれた。 切ないという感情はこういうことなのか、胸の真ん中がじわっと苦しくなる。 「大きな声出して、ごめん・・・。」 もう一度、その冷えた彼女を包み込んだ。 ゆっくりと、強く。 「・・・・・。」 「電話か?・・・電話が聞こえた?」 「・・・・・。」 俺の胸で、ユリは小さく頷いた。 「そっか・・・。」 やはりそうだった。 彼女は誤解している。 誤解したままここを飛び出し、たった一人どこかで何時間も悩み、それでも帰って来てくれた。 どれだけの葛藤があったのか。 どれだけの迷いがあったのか。 それでも俺の元へ帰って来てくれた。 腕を緩め、彼女の両頬を手のひらで覆うと、真正面からじっと視線を合わせる。 「ユリ・・・・・聞いて?」 ユリは、震えていた。 「ユリ、俺を信じろよ・・・・・。 俺は、ユリを愛してる。」 本心だった。 生まれて初めて口にした「愛してる」という言葉。 この広い世の中で、俺がたった一人にしかつかわない言葉。 わかってくれ・・・ おまえを本気で愛してるんだ・・・・・
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