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「ここ、覚えてる?」 「もちろん・・・です。」 「良かった・・・・・さあ、入ろう。」 大きな窓から夜の海が見えるその席は、前回食事にきた時と同じ席だ。この店に予約をした際、「想い出の席なので、奥の窓際を」とお願いしておいた。 濃紺の海は僅かに波のしぶきを見せるだけで、とても静かに月明かりを映していた。 ユリは食事が運ばれてくるまで、黙ったままじっとその海を見つめ、何かを考えているようだった。 ふと俺の視線に気付いた彼女は、照れたように微笑みを浮かべる。 「何となく、緊張します。」 「ん?どうして?」 「あの時を思い出して。」 あの時・・・ 二人の気持ちを確めた、あの時・・・か・・・ 「・・・そうか・・・ひょっとして前回来たとき、ユリは緊張してた?」 「ふふ、そうですね。」 「ふーん。ま、俺の方がガチガチだったけどね。」 「え?・・・そうな風に見えませんでした。」 まん丸になったユリの目を見て、俺は少し肩を上げ自嘲気味に笑う。
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