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「あの時は、ずっと好きだったユリと初めてのデートだったからなぁ。すげぇ緊張したよ。」
「知らなかった。」
「ユリがここを喜んでくれてホッとしていたら、車に戻ったときに『自分をどう思っているか』と訊かれた。」
「そう・・・氷室さんがあまりにも優し過ぎて、でもはっきり聞いてないし・・・不安でした。」
「あれは、頭をガツンと殴られたようだったな。」
「・・・・・。」
「今はどう?」
「・・・・・今は不安なんてありません。・・・幸せすぎて、恐いくらいです。」
「ん・・・・・ならいい。」
恐いくらいの幸せ・・・
お前が望むなら、この先ずっと俺が与えたい
朝も夜も、お前が笑っていられる未来を・・・
店から出ると、潮風が彼女の髪を揺らした。
晩秋の冷たい風に顔をしかめ足早に車へ乗り込むと、乱れた髪を耳に掛けてそのまま指を毛先まで滑らせる。
その仕草に、思わず見とれた。
彼女は再びそんな俺の視線に気付き、見つめ合う。
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