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「ユリ、今日はありがとう。」
「・・・・・?」
「一緒にいてくれて。」
しみじみと言った俺は、ユリの小さな手を握る。
彼女は俺の目をじっと見ながら、微笑んでいた。
「氷室さんも、ここに連れてきてくれて、ありがとうございます。」
「・・・・・・・・。」
「氷室さん?」
怪訝そうに覗きこむ彼女を尻目に、俺は胸ポケットから取り出した小箱をユリの手のひらにそっと乗せた。
数日前、俺はアクセサリーショップへ行った。
一人きりで、仕事とは関係なくあんな店へ入ったのは、初めてのことだった。
ユリのことを考え、ユリのために、ユリに似合う、ユリが笑顔になるものを、ユリだけに・・・ この小箱には、そんな俺の気持ちが詰まっている。
「誕生日・・・おめでとう、ユリ。」
驚き、戸惑っていた彼女。
ゆっくりと箱を開け、そのピンク色のバラをモチーフにしたピアスを耳に着け、笑った。
やっぱり似合う・・・ 良かった・・・
涙を流して喜ぶ彼女の頬を撫でながら 俺は、恐いくらいの幸せを感じていた。
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