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車を出発させて、来た道をもどる。 助手席のユリはいつもにまして機嫌良くお喋りを始め、俺に質問をしてきた。 「このピアス、氷室さんが買いに?」 「そ。すげぇ、恥ずかしかったー。」 「・・・・・・。」 「俺、どんなのがいいのか全くわからねぇから、店員に相談した。彼女の初めての誕生日なんだ、って。」 「・・・・・・。」 「ユリはピアスをよくしてるから。」 「はい・・・・・大切にします。」 俺はつられて、彼女の誕生日を知っていた事情を暴露し、この誕生日に向けてレストランを予約したことも、あの席を指定していたことさえも話してしまう。 お喋りな男を軽蔑していた俺だが、彼女の事を必死に考えた数日間をわかって欲しい気持ちが抑えられなかった。 まったく、俺ってガキだなぁ・・・ ユリを前にすると、いつもこうだ・・・ 「あーあ。」 「・・・・・?」 「俺さぁ、なんでこんなにユリを好きなんだ?」 「へ?」 「自分でも信じられねえよ。・・・いや、変な意味じゃなくてさ。この俺がだよ?・・・一人の女の子にどうにか喜んでもらおうと、毎日あれこれ考えてんだ・・・この俺が。」 「・・・・・。」 「こうなると、病気だな。」 「ふふっ。・・・嬉しいです。」 「・・・・あー、重いよなぁ、俺。ごめん。」 車は彼女の自宅前にある公園の駐車場へ到着した。 別れるのは名残惜しいが、サイドブレーキをかけてユリの肩に手をまわし、キスをしようとした時だった。
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