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熱は下がっていた。
汗で濡れたものを着替えると、バックを肩に掛けたユリが寝室のドアを開いて顔だけを覗かせる。
「氷室さん・・・私、帰ります。」
俺は、たまらず手招きをする。
「ユリ、ちょっとおいで。」
「はい?」
近づいてきたユリの手をとり、メガネを外した俺でも顔がはっきりと見える距離まで引き寄せる。
「ありがとう、かなり楽になった。」
「・・・・・また、明日来ます。良いですか?」
「ん・・・・・心配かけてごめん。」
「・・・・・。」
「ユリ?」
「・・・・・。」
目を合わせず、俯く彼女。
今までどんな時も笑っていたのに、今日は違う。
まずい・・・
本気で怒らせたのかな・・・
そりゃ、こんなになるまで黙っていれば・・・
たとえユリだって、怒るよな・・・
「そんなに怒ってるユリは、初めて見たよ。」
「・・・・・。」
「悪かった、ごめん。連絡もしないで。」
握った手を更に力を入れて握り、下をむく彼女の顔を覗きこむ。
はぁ困ったな・・・
どうしたらいいんだ・・・
ユリ、お願いだ・・・機嫌なおしてくれよ・・・
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