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「悪かった・・・ごめん。連絡しないで。」
彼女の笑顔をどうにか取り戻そうと、ユリの手を引き寄せてとにかく謝った。
明らかにいつもと違う表情に、動揺している俺。
少しの沈黙のあと、彼女はやっと顔をあげた。
「・・・・・違います。」
「ん?・・・・・。」
「氷室さんに怒ってるんじゃありません。」
「・・・どういうこと?」
「私は・・・・・私に怒っています。」
え?・・・・
ユリが自分に怒ることなんて、ないじゃないか?
俺が悪いんだから・・・
「氷室さんに守られてばかりの私に、おこっています。」
「・・・・・・ユリ。」
「氷室さんは、悪くありません。」
「・・・・・。」
「私だって・・・氷室さんが弱ってる時くらい、力になりたい。けれど・・・頼りない私に、怒ってるんです。」
「・・・・・。」
「私は、ちゃんと氷室さんを支えられるようになりたいのに・・・。」
そう言って彼女は下唇を噛み、目を潤ませた。
今にも泣きそうなのに、ぐっと我慢しているように俺の目を真っ正面から見つめた。
「・・・・・ユリ。」
「帰ります・・・・お休みなさい。」
「ユリっ!」
帰ろうとドアへ向かう彼女の腕を、俺はベットから飛び起きて手加減なしに掴んだ。
「違うよ。」
彼女を、思いきり抱き締める。
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