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このまま帰せない。
帰したくない。
頭の中がぐちゃぐちゃで、気持ちを落ち着かせるために俺は大きく深呼吸をする。
笑顔を見せない彼女は、連絡をしなかった薄情な俺に怒っているとばかり思っていたが、誤解だった。
逆に、自分が頼りないと落ち込んでいたんだ。
「連絡をしなかったのは、俺が悪い。俺のくだらないちっせぇプライドが悪い。・・・・・ユリが頼りないんじゃない。」
「・・・・・。」
「今日は本当に、ユリに助けられた。マジでまいった。・・・・今日だけじゃなく、いつでもおまえは俺の支えなんだ。」
「・・・・・。」
「ユリには敵わない。なんでそんな可愛いことばかり言う?」
俺の胸に埋めていた顔を上げ、じっと俺を見る。
その顔がまた可愛くて、思わず苦笑した。
「ごめんな。ありがとう・・・ユリ。」
「・・・・・。」
「・・・キスしたいけど、今日はやめておく。」
「・・・・・・氷室さん。」
「ん?」
急に背の低い彼女が俺の首に手をまわし、引き寄せられたかと思うと、チュッと音をさせて唇が離れていった。
えっ、今・・・
俺・・・ キスされた?・・・・
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