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その日は一日、ユリのことを考えて過ごした。
二人で暮らし、食卓の向こうで笑うユリ。
やがて子供が出来て、母になったユリ。
時を経て歳をとった俺の隣には同じように歳をとったユリ。
一緒の将来が見える人は、ユリしかいない。
ユリと「結婚」するなら、まず何をするのか。どうしたら、彼女を自分の「妻」にできるのか。ありとあらゆることを考えた。
ユリが来るであろう時間が近づくにつれ、子供のように気分が浮かれている自分がいる。
昨日会ったばかりだというのに、彼女の到着が待ち遠しかった。
チャイムがなってドアを開けると、大きなスーパーの袋を提げて、ユリが微笑んでいた。
待ち焦がれていたエクボ見て、緩んだ顔を抑えきれない俺。
「ユリ、おかえり。」
「・・・ただいま。」
こんな会話、もう夫婦みたいだな・・・
ヤバい・・・また一人でにやける・・・
マジでやっベぇな俺・・・
そんな俺をよそに、ユリは長い髪を1つにまとめて台所に立ち、親子丼を作ってくれた。
数日まともに食べていなかったこともあり、「旨い」と連発しながらバクバク食べる俺を、彼女はじっと見ている。
呟くように「良かった・・・」と言って、安心したようだった。
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