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「氷室さん、熱は?・・・」
「36度台になった。ユリのおかげ。」
俺が淹れたコーヒーを、彼女の前に置く。
「ふふっ、薬のお陰です。ちゃんと病院から出されたお薬は飲まないと。」
「はい、スンマセン。」
どっちが歳上なのか分からない会話をして、肩をすくめながらユリの隣に座った。
彼女はころころと笑い、俺はそれをじっと見つめてしまう。視線に気づいた彼女に「明日から出社する」と伝えると、今度は目を細くしてくしゃっと微笑んだ。
「ユリ・・・ここにおいで。」
俺は片方の膝を手でポンポン叩き、合図をする。
迷うことなくユリは立ち上がり、ゆっくり膝にのると両腕を俺の首にまわし、至近距離で見つめ合った。
「ユリ、昨日はありがとな。助かったよ。」
「あの・・・氷室さん。」
「ん?・・・なに?」
「昨日は勝手に押しかけてきて、ごめんなさい。」
「・・・・・。」
「お熱があるから帰るよう言われても、私ったら帰らないで・・・言うことをきかずに。いくら心配だからと言っても・・・体調があんなに悪かったのに、強引でした。」
「・・・・・。」
「氷室さんを、困らせちゃいましたね。」
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