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ユリとの将来を考え始めてから、俺は仕事へ真摯に向き合った。
以前もけして不真面目ではなかったものの、成績をのこし給料を上げることに何の意味も感じなかった。
売ったって売らなくたって、年功序列で役職はつき、徐々に給料も上がっていくものだと考え、努力をすることは無駄だとさえ思っていたのに。
俺は変わった。
彼女に惚れれば惚れるほど、「自分を高めたい」と全ての意識が根底から覆えされていった。
彼女の助けになれる男になりたい。
彼女を守れる男になりたい。
彼女に相応しい男になりたい。
そのために自分で決めた「表彰を受ける」という目標を、今クリアしたのだ。
繁忙期に入ってからクリスマス直前の今日まで、ほとんど休みは取れずに毎日残業していた。
睡眠不足の忙しい日々でも、前向きに頑張れたのは言うまでもなく彼女のお陰だった。
最近のユリは休みになると合鍵を使い、部屋で食事を作り、俺を待っていてくれるようになった。
家に帰ればユリがいる。
そう思うと不思議と仕事がはかどり、帰り道で自分の部屋の明かりがついていた時の感動は、とりわけ俺を励ましてくれていた。
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