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「あぁ、悪い。考え事してた。」
「・・・・・疲れてますよね。こんなことさせて、ごめんなさい。私やりますから、座ってて?」
「大丈夫、疲れてないよ。」
「でも・・・。」
「これくらい、させてくれよ。旨い飯を作って貰ったのに、ただ座ってるだけなんてダメだろ?」
「そうですか?じゃあ・・・。」
ユリはにっこり笑うと、再び蛇口をひねって食器を洗い出した。
「なぁ、ユリ。」
「はい?」
「今年のクリスマスは、出勤日か?」
「クリスマス?そうですね。」
「じゃあ、仕事が終わったら待ち合わせして、飯を食いに行こうよ。」
「わ、会えるんですか?嬉しい。」
水道の蛇口を締めながら、彼女はピョコピョコ踵を上げて喜んだ。
俺は最後の一枚の皿の水分を拭いて食器棚へ戻すと、布巾を電子レンジの上に放り投げて彼女の前に立ちはだかる。
両手を広げた俺の胸に、ユリは静かに近づいておさまると、お互いギュッと力を込めて抱き合った。
「あの展望台で、待ち合わせしよう。」
「・・・・・。」
「今度は遅刻しないから、リベンジしたい。」
「・・・・・。」
「いい?」
「・・・・・はい。」
顔を上げた彼女の髪を、何度も繰り返し撫でる。
ユリは、気持ち良さそうに目を閉じた。
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