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まずい・・・もうすぐ約束の時間だ・・・
ユリがくる・・・
緊張してきた・・・
これほど手に汗を握るような感覚は、どのくらいぶりだろう。
俺はクリスマスの展望台で、エレベーターから降りる人々の中にユリを捜していた。
決めていた。
プロポーズは元日の夜明けとともに・・・と。
指輪は、宝石売り場で密かに用意した。
あまり大きくない石だが、デザインが可愛らしくてユリに似合うと思い決めた、俺の誠意。
今日はユリを「初日の出を見に行こう」と誘うつもりで昨日からソワソワしていた。プロポーズ準備の最終段階にきて、彼女がすんなりと誘いにのってくれたら、勢いがつくだろう。
俺がユリとの結婚を望み、それに向けて歩き出していることなど、彼女は何も知らない。
ここ数日の俺のこの高まった気持ちと、ただクリスマスのデートを喜ぶユリとの温度差を感じながら、カップルだらけの展望台で彼女の到着を待っていた。
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