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「ユリ・・・・元旦は初日の出を見に行かない?」
「わ、良いですね。」
あっさりと了解を得られて、俺は悟られないよう静かに深呼吸をする。
微笑みかけると、彼女もエクボを見せた。
「朝、ユリの家へ迎えに行くよ。」
「じゃあ私・・・前の日から、氷室さんのお家に行っちゃおうかなぁ。大晦日だから、両親には上手く言えばだいじょ・・・。」
「それは駄目。」
「え~。」
「ごめんね・・・とにかく駄目。わかるだろ?」
「・・・・・はい。」
結婚を考えている今、会ったことはないがユリのご両親の気持ちを考えていた。
無論、惚れてる彼女が自分の部屋にいて、一緒に朝を迎えられたら幸せだろう。
しかし、ご両親はそれをどう捉えるのか。
彼女の結婚相手として相応しいと認められたい俺は、ユリを泊める訳にはいくまい。
特に父親の気持ちになると、それは出来なかった。
それから施設内にあるレストランで食事をすませ、二人で駅へ向かい始めた時のことだった。
ビルの出口から続くデッキの向こうから歩いてくる男性が二人、俺達を見てピタリと足をとめた。
「氷室!・・・・・と、えっ、ユリちゃん?」
立ち尽くしていたのは、外商部のあいつらだった。
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