58

3/3

4425人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「ユリ・・・・元旦は初日の出を見に行かない?」 「わ、良いですね。」 あっさりと了解を得られて、俺は悟られないよう静かに深呼吸をする。 微笑みかけると、彼女もエクボを見せた。 「朝、ユリの家へ迎えに行くよ。」 「じゃあ私・・・前の日から、氷室さんのお家に行っちゃおうかなぁ。大晦日だから、両親には上手く言えばだいじょ・・・。」 「それは駄目。」 「え~。」 「ごめんね・・・とにかく駄目。わかるだろ?」 「・・・・・はい。」 結婚を考えている今、会ったことはないがユリのご両親の気持ちを考えていた。 無論、惚れてる彼女が自分の部屋にいて、一緒に朝を迎えられたら幸せだろう。 しかし、ご両親はそれをどう捉えるのか。 彼女の結婚相手として相応しいと認められたい俺は、ユリを泊める訳にはいくまい。 特に父親の気持ちになると、それは出来なかった。 それから施設内にあるレストランで食事をすませ、二人で駅へ向かい始めた時のことだった。 ビルの出口から続くデッキの向こうから歩いてくる男性が二人、俺達を見てピタリと足をとめた。 「氷室!・・・・・と、えっ、ユリちゃん?」 立ち尽くしていたのは、外商部のあいつらだった。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4425人が本棚に入れています
本棚に追加