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「氷室さん?」
俺のポケットの中にある、繋いだままの手をユリが引っ張り、ニコニコ笑って何か言いたそうに俺を見ている。
クリスマスの駅のホームは賑やかで、浮かれて仮装している学生や酔ったサラリーマンたちで溢れていた。
その雑踏の中でユリの声を聞こうと、俺は身を屈めて耳を彼女の口元へ近づける。
「ん?」
「・・・・・・・だ~いすき。」
・・・・・!!!
「ばっ・・・ばかやろう。」
「はいっ?はいっ?・・・ふふ。」
ユリは俺の反応を楽しむように、顔を覗きこんで首をかしげる。
「やめろよ。・・・嬉しいじゃねーか。」
「ふふふっ・・・。」
不意討ちを喰らって情けないほど動揺した俺は、照れ隠しにユリの頭をクシャクシャにする。
「やだぁ」と笑いながら、その髪を整える彼女。
ヤバイ・・・
ユリが・・・「大好き」だって・・・
こんなとこで、急に言うかなぁ・・・
あー、ヤバい・・・にやける・・・
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